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「対象外なのは怖いからだろ」 「んなの、貫通式が痛いのんだから怖いに決まってるだろ」 つまらない。 つまらない会話をしていると思う。 終わりもしないつまらない会話。 なのにKENNは楽しそうだ。 ヤりたいから、俺の警戒を解くためにとりとめのない会話をしているくせに。 それなのに腹を抱えて笑っていやがった。 甘い香りなんてしない。 苦い煙草の臭いを撒き散らす、この年下のくそ野郎に。 居心地がいいかも、なんて。 「寒い」 「俺の分まで着てるのにか?」 「うるせえ。寒い。とっとと帰るぞ。後ろに乗れよ、バーカ」 ヘルメットを被ろうとしたら、その手を遮られた。 「まだあんたと居たい」 うわ。真っ直ぐに見つめてくる。 「ホテルに行きたいって意味か?」 綺麗な言葉で飾ってもどうせヤりたい事は1つなんだから。 「違うって。あんた臆病すぎ」 「お前の頭の中はヤりたいかヤりたくないかと思ってたんだが」 「それは根本にあるけどさ、アンタと恋人になれたら――なんか変われる気がするんだよ」 けっ。変身でもしてろ。ばーか。 甘い言葉に苦い煙草の匂いが、アンバランスで。 甘ったるい言葉を吐く声は、ハスキーで低い。 落っこちてそうな満月の下、俺は恋愛なんて面倒でましてや恋人なんか一ミリも欲しくなくて。 心に侵入して来るヤツなんざもうウンザリだと思ってた。 だが煙草の味がするキスは、してみたい。 疲れた脳が、まとまりのない答えの出ない思考をさ迷っていた。 「むかし、恋人がいたなぁ」 ボソッと呟く。 「昔って」 鼻で笑うKENNを鼻で笑い返す。 「俺が18年前の18の時だからお前は9歳の鼻垂れのガキんちょの時だぞ」 ゲホッ KENNが18年前と聞いて噎せやがった。ガキめ。

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