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七
「18年も一人身――とは言わねえか。18年遊んでるって意味か」
「ああ。それに男一人で椿を育てるのは大変だったし満たされんだ。恋人なんかいらねぇ」
「だが椿はもう雷也がいるし。あんただって18年恋愛をしてなかったんだ。リハビリしなきゃ恋愛の仕方を忘れてるだけだよな」
くくっと笑う。
だから俺は小馬鹿にしてやった。
「――18年、引きずってるって線もあるぞ?」
視線を絡めて、煙草を奪い取る。
俺と話してる時に煙草なんか邪魔だろーが。
「じゃあ18年分濃く愛してやるよ」
カラン
不意を突かれて、腕を取られた。ヘルメットが地面で弧を描いている。
煙草の匂いがする、温かい腕の中に捕らわれた。
「俺はちょっとしつこくてかなり重たい愛だが――あんたを18年も傷つけねーよ?」
「離せ」
腕の中で暴れると更に力を込められた。
「やだよ。逃げんな」
「お前みたいな大男に抱かれるのは勘弁だ。抱くのはもっと無理だが」
「俺は、あんたの元恋人と正反対で、不誠実でマッチョで優しくて嘘を吐かない人だぞ。観念して惚れろ」
何でそんな、俺の元恋人についてよく分かってるんだよ。
「嫌だ。年寄りをからかうな。帰るからさっさと離して後ろへ乗れよ! ぶっ飛ばすぞ」
「すっげぇ好き」
会話の脈拍も分からないのか、KENNは押せ押せで強引に告白へ持っていく。
若いって怖い。若いってしつこい。若いって――むかつく。
「あんたのいつもの生気がない、なんての? 儚げで消えてしまいそうな艶ってか、エロさも嫌いじゃねーンだけどさ」
なんだよ。艶だのエロだの。顔の原形が分からなくなるぐらい殴るぞ。
「でも、しゃべるとちょっと子供っぽい、イメージ全部ぶち壊す太陽さんが俺はヤバい。ヤバいぐらいハマってる」
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