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「俺は、得体のしれない、図々しくガンガン来るお前が違う意味でヤバい。げーのーじんがそんな遊ぶ為だけに此処まで口説くなんて、無駄な労力だとも思う」 「だって、あんた、本当の重い俺を知ったら逃げだすぜ? だから先に惚れさせてから重い俺から逃げられなくしてやりたいんだよ」 「自分勝手だ、な!」 また不意を突いて、KENNの鳩尾に肘を一発お見舞いすると腕の中から逃げる。 よろめいたKENNの尻を後ろから蹴飛ばすと、思っていた以上に重くて堅くて更に苛々してしまう。 「乗らないなら置いていくから、この寒い下で凍死しとけ、馬鹿、筋肉馬鹿」 ヘルメットを投げつけるが、痛そうな表情もしないから面白くない。 いつか、本当に喧嘩してやろうか。雷也みたいなひょろい奴に負けるんだから、俺だって負けないと思うぞ。 ヘルメットを持ったまま、苦笑いで座り込むKENNは動こうとしない。 「何をしてんだ。置いてくからな。知らねーぞ」 「あーあ。黙ってたら好みなのに、喋ったら」 「なんだよ」 「もっと好み」 言葉の最期にハートマークが浮かんできそうな、気持ち悪い言葉を放つと、KENNは後ろへ乗り込んだ。 こいつ、舎弟とかテレビで見るぐらいの距離ならちょっと面白いのに。 目の前に居ると、苛々してしまうな。 「いつか、ぶっ殺しそうだから、もう会いに来るなよ」 「アンタになら殺されたいね」 へらへらと笑うKENNがヘルメットを装着したので、俺もヘルメットを被るとそのまま頭突きをかました。 「せいぜい、振り落とされないように情けなくしがみ付いとけよ」 ストレスが溜まったこの時間、なんとか逃れようとエンジンをかけると、アクセル強く回した。 バイクの速度に月が追いつくのが間に合わなくて、バターみたいに溶けて見えるようなクリスマスから少し経ったこの時間に。 なんで俺はこいつと二人、夜景なんて見たり二人乗りしてるのかと、空しくなった。 ただ、それだけだ。

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