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十一
「知るかよっ。まだ頭に響くから黙れ」
追い払うように突き飛ばすが寒田はびくともしなかった。
「何で、俺とは会わない癖にあいつとは遊んでいるんだ!」
あいつ、と言う発言に思考が一瞬止まったが、どちらにしろ寝る前に飲んだ酒が頭に残っていてガンガン響く。
「うるせーな。頭に響く。帰れ!」
「今日は俺もオフだから帰りませんっ」
「あの、――おはようございます」
階段から顔を出し寝癖を整えることもせず、椿が俺ら二人に挨拶してきた。
一階は昨日のまま空の段ボールが泳ぐ深海よろしく散らかっている。
その中に、焦げ茶色のセーターにジーンズの寒田が立っている。スーツではなく、私服姿は初めてなのかまじまじと見ていた。
それとは反対に、俺は 不機嫌そうにテーブルに肘を付き、そっぽを向いていた。
「あれ? 父さん、一日寝るかと思ってた。今から走りに行くの?」
「もう行ってきた」
そうぶっきらぼうに話す。
「――KENNなんかと走って来たらしいです。 信じれません」
やや興奮気味で寒田がそう言うと、途端に椿が不機嫌になった。
(本当に行ったんだ)
そう言わんばかりに眉を寄せて椿が言葉を飲み込んでいるのが分かる。
まぁ本当に KENNの手の速さには舌を巻きたい。
そもそも、KENNは手が早いだけで椿にも俺にも 恋愛感情なんて無いはずだ。でなければ、あんな歌を椿に歌っておきながら、俺に狙いを変える はずはないはずだ。
うん。ないない。
「太陽! 聞いてますか!」
「うるせーな! 俺が誰と遊ぼうお前には関係な い! 一ミリも関係ねーんだよ!」
ダァンと机を叩き叫んだが、俺は寒田の方を見 なかった。
「悪い。……椿、ちょっと席外してくれ ねー?」
バツが悪そうに言うと、椿は寝癖を整えながら寝ぼけていた身体を起こす。
「あ、俺、今日は雷也さんの所に泊まりに行くか ら」
そう言って、すぐに自室へ逃げやがった。
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