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十二
椿め。ちゃっかりしやがって。
「太陽。KENNだけは止めて下さい」
「うるせーな。KENNはただのバイク仲間だろーが」
「向こうはそう思ってません!」
ってか、ムキになるけど、お前なんで俺とKENNが会ってたの知ってるんだよ。
なんで血相変えてるんだよ。
「俺が誰と遊ぼうがお前にはもう関係ねーよ。消えろ」
KENNよりもお前の方が殺したいぐらい嫌いだってーの。
「KENNとこれからも会うんなら、俺たちの昔の関係を――椿くんにバラします」
「――――」
肘をついていた俺は顔をあげて、寒田を見た。
寒田は思い詰めた目で、本気で俺を脅しているのが分かった。
「てめぇ」
「あの、行ってきます」
ひょっこりとまた階段から顔を出した椿が、張り詰めた空気に驚いている。
「ああ。気を付けろよ」
机の下で握りしめた拳に力がこもる。
「殺されてぇなら言えよ」
「――憎まれてもいい。何があろうとKENNなんて反対です。貴方は同じ人と遊び続けるような器用さはない。絶対に傷つきます」
俺を分かりきったように言うが、所詮お前は18年も前の過去の野郎だろ。
偉そうに言うのは止めろ。
「てか、確かにKENNは下半身だらしなさそうだが、無理矢理俺を抱くような奴じゃねえよ? お前はKENNの何を知っててそんな偉そうに」
立ち上がり、珈琲でも飲もうと寒田に背を向けると長い腕が伸びてきた。
「――おい」
振り返らないが、寒田の体温が背中から伝わってくる。
壁と寒田に挟まれて、俺は身動き一つ、――息を吸うのさえ苦しい。
「分かっていただけないようなので、椿くんに電話しますから」
「上等だ」
いつもなら、人目につかない場所を殴るんだが余裕が無かった俺は、眼鏡が吹き飛ぶようなパンチをお見舞いした。
「お前が言うぐらいなら、俺が言う! ――俺が椿に言えば良いんだろ」
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