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二十三

「アンタの好きにしていいよ。連絡は、俺からじゃなくてアンタが俺を呼びたくなった時用だし。――今夜みたいに一人で傷つくぐらいなら俺を呼んで欲しいから」 「け。俺はよばねーよ」 「良いから良いから」 ご機嫌なままのKENNはそのまま俺の携帯を奪うと自分の番号を登録始めた。 しれっと俺の番号も奴が登録している。 「もうすぐ、雷也と俺のCDアルバムが同時に発売せれるんだよな。最近ようやくマニアじゃなくて一般受けも歌いだして勢いがある雷也と同時」 「それは災難だな。俺はどうでもいいけど」 「――それでも俺は一位になる。一位になって見せたら、あんたも逃げるのは止めて俺で手を打ってよ」 こいつ、俺を口説いてるくせに、俺にKENNで妥協しろとかどんなアプローチの仕方だよ。それは。 「一位になったらご褒美に電話、頂戴」 「その間は、俺が男に抱かれようが女を抱こうが好きにしていいんだな?」 「その間、俺が待てないって言うなら、仕方ね―かな。止めろって言って止めてくれるなら止めるけど」 「俺がお前に浮気すんなよって言ったら?」 「絶対しねぇ」 KENNという男は、椿から聞くにどんなに悪い奴かと警戒していたのだが、いつの間にこんな忠犬ハチ公見たいな発言ばかりする良い子になったんだ? 昔はもっと、いや、初対面から、悪い男の匂いを前面に押し出していた気がするのだけど。 「お前が一位になったらって、俺がテレビをチェックしなきゃいけねーのかよ。音楽番組なんか自分から見ないぞ」 「だから、俺の為に見てよ」 「お前は本当に頭がおめでたいよな」 「見て」 「うーーん。分かった」 ご褒美が電話でいいなんて。 はっきり言って、身体の関係以上を強いられるのは、あんま好きじゃないけど、それぐらいで気分がが晴れるのならばいいのかとも思う。 「せいぜい、頑張れよ」 「もちろん」 嬉しそうに笑うKENNは、確かに犬みたいに尻尾を振っているように見えた。

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