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二十四

とは言っても、いつがCD発売なのかも聞きそびれた。 椿に、雷也のCD発売を聞くのも変だし。そもそも、息子が作詞してても聴こうとしも、興味をそそられもしないんだぞ。 「親父、蜂蜜塗り過ぎだから」 朝っぱらから、あきれ果てた顔で椿が俺を見る。 椿を凝視しすぎて、トーストに塗っていた蜂蜜が、滴っていた。 「お前、最近、肌が艶々してるよな」 滴る蜂蜜のパンを口の中で十分に噛みしめながらそう言うと、椿はココアを盛大に拭いた。 艶々な原因は、きっと雷也のせいなのか。あいついつか殴ろう。 ココアを飲みながら、椿が纏めてくれている俺の仕事のスケジュールを見る。 結婚式のブーケの他に、急激に1週間だけ花束の依頼が集中している。 椿が管理して、ハードにしないようにしているのに。 バレンタインデーだ。 「この前の日って、なんかあるの?」 そのハードスケジュールの前日に椿が休みを指定していた。 何かあるらしい。 「KENNと雷也さんが、音楽雑誌で対談と表紙撮影だって。どっちのファンも対抗意識ばちばちで、気になるから助手として見に行こうかなって」 ごにょごにょと話す。 なんだよ、あいつら、ファンまで仲悪いとかマジでウケるな。 うちみたいに、ネットで注文して指定日に指定場所に配達する花屋なんていっぱいあるし。 椿が自分のスケジュールを少しきつくしてまでも見たいと言うならば、まあいいんじゃねーの? その撮影日に嫌がらせに俺がKENNに大きな花束を贈ったならば、どっかの不器用なおっさんはショックで倒れてしまうだろうか。 身体じゃなく、心が欲しいと言われても、今さら曝け出す心なんて、ない。 寒田が俺を諦める方法って、何があるのだろうか。 「お前、俺が再婚したらどうする? 女とだぞ」 ぶふっと椿は本日二回目。 盛大にココアを吐きだした。 「うっそ」 寒田を諦めさせるために再婚ってのも、違うよな。 ってか、人を好きになる気持ち、俺は何処に落として行ったんだっけな。

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