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三
嫌いだし、太陽に近づいて欲しくは無いが、こいつはこいつで自分の譲れない信念はしっかりあるようだ。
「おい、寒田」
雷也が、振り向いて俺に何か怒っている。
こっちはまだ話が終わってないと言うのに。
「お互い、仕事中だったな」
「ああ。またいつか」
挨拶もそこそこに、雷也と椿君の元へ駆けよると、椿くんが不安そうに俯いていた。
「どうしたんですか?」
「あの、うちから花が届きました」
「花?」
スタジオにわざわざ花?
お日さまのように明るい花が詰め込まれた、元気いっぱいの花束が届けられている。
太陽が作る繊細な花束とはかけ離れた、繊細さもない豪快な花が。
でも誰が一体?
「お、それ、俺宛?」
ひょいっと現れたKENNが、椿くんから花束を奪い散る。
「返せ」
「でもこの花束、俺宛のメッセージカード付きだぜ?」
その言葉に、椿君が悔しそうな顔をしている。
KENNは、その花に愛しげに頬を寄せた。
花の扱い方が、恋人への扱い方だとしたら。
KENNはきっと、枯れるまで毎日愛でるだとう。
毎日、頬を寄せて、香りを楽しむだろう。
俺は、歪んでいる。
きっと自分なら、枯れないように永遠に咲き続けるように氷漬けにするか、ドライフラワーにするか。
きっと形や色が変わっても、手元に残ればそれで満足なんだ。
きっと俺は、キミに近づく為ならばどんな卑怯な手を使っても良いと思ってたあの頃から、ずっとずっと歪んでいるんだ。
キミが繊細で、細部まで拘って作っているその花束が、ブーケが好きだった。
でもキミは、自分でも気づいていないと思うけど。
KENNへの花束は、今までも感性では作っていない。
キミの気持ちが、変わりつつあるんだ。
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