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五
椿君は、KENNと太陽が仲良くなるのが面白くないのか。
二人の距離の接近に危機感を持っているんだ。
「それは、分かります。俺も調べましたから」
彼が暴力をふるっていたのは、田沼さんだけ。
――自分を認知もしなかったくせに、最近になって親のように振る舞おうとした肉親にだけ。
「すこし、時間を下さい」
まだ太陽もKENNも、太陽の気持ちの変化に気づいていない。
このまま、二人の気持ちが引かれ合う前に俺が出ていくべきか。
本当の幸せを願うなら一歩引くべきか。
そんなのはとっくの昔に明白になっていた。
豪快に笑う、キミの繊細な心。
俺は、キミの全てが欲しいんだ。
骨まで全部。
「ね。びっくしした」
「普通に、ちょっと引いちゃうよね」
こそこそと女性スタッフが話しながら俺の前を通過した。
「いつ見ても、KENNの背中――」
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