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愛してる
チャリンっとバイクの鍵を真上に投げてはキャッチして、投げてキャッチして、タートルネックの首元を上へ上げる。
散々だった。
暴力と快感が紙一重なんざ、死んでも思いたくねえよ。
気持ちは良かったけど、気分は最悪だ。
子供みたいに俺を抱き締めて眠るKENNが煩わしくて、さっさと置いて帰って来た。
言い訳はしなかったけど、これからもあいつはあんなふうに生きていくのだろうか。
可哀想な奴。
だが、今は同情をしてやる気にもなれやしねえ。
「親父!」
のろのろと店のシャッターを開けようとしていたら、中から椿が飛び出してきた。
「げ。びっくりした」
「ごめん、親父。仕事がまだ何件も残ってたんだろ。俺のミスで、親父に迷惑かけて」
「あーー。あのくそKENNの野郎がしゃべったんだっけ。気にするな。俺も悪かったし、KENNは馬の様によく働いたしな」
「ごめん。お詫びに家は俺が全部片付けるから眠ってて? てか疲れてるのに何処行ってたの?」
KENNに抱かれてました、なんか自分の息子に言えるわけもなくただヘラリと笑って誤魔化す。
「親父さんと走ってた。負けたし疲れてるし、まじ最悪」
「そりゃあ、何日も眠ってないんだから疲れてるよ、なんでそんな日にバイク乗るの。事故るよ」
上着を脱ぎながら適当に受け答えして、早く部屋に戻りたかった。
流石に、ちょっと椿と抱かれてすぐに顔を合わすのは気持ちが良いものじゃねえ。
そうか。疲れてフラフラだったから、まともな判断もなかったんだよな。俺。
「あー。まあ、寝るよ、もう」
「そうだよ。寝てよ、明日の朝まで起きてきたら駄目だからな」
まさかのまさか、息子からそんな事を言われるとは思っても居なかった。
余程、仕事の件を反省してくれているらしい。
可愛い奴め。
鍵を空に放り投げてキャッチしながら、にやついてしまう。
「あれ? 親父のバイクのキーって、そんな革のキーケースだったけ?」
めざとく俺がチャリチャリと鳴らしているキーを見た。
だから、もうこれ以上は面倒なので笑って流す。
「これは戦利品」
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