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六
すると、人差し指が俺の首元へ伸びたかと思うと、思い切り首元の服を下へ引かれ、首が露わになる。
KENNに絞められた首の痕がくっきりと寒田にも見えたのだろう。
「貴方は、本当に馬鹿です!」
「ちょっ まだ俺は田沼と話は済んでねーンだ」
「俺との話が先です」
無理矢理掴まれた腕は、びくともしない。
だが、椿の前で言い争うには、聞かれたくない内容だらけで。
「アンタ、申し訳ないが俺が言いたかったことは、もう二度と父親面すんなよってことだ。KENNは、アンタの財産もいらね―だろうよ」
「親父!」
「ははは。確かにその通りだね」
「そんな話だったんだが、アンタの気持ちを聞けないままだがすまねー。ちょっと拉致される。椿、後は頼んだから」
「ちょっと! 親父!」
俺だって、椿が見えなくなれば、こいつを殴ってでも手を振りほどく。
今だけ、今だけ我慢だ。
「もう離せっ」
やっと離されたのは、少し離れた有料駐車場だった。
ぽつぽつとしか車が止まっていなかったが、なんとか手を振りほどこうと暴れるが、全然離れやしねえ。
殴ったり蹴ったりしたら眼鏡が落ちた、がそれを拾う素振りもせずに、寒田は俺を車の後部座席へ押し込んだ。
押される形で乗せられ、振り返ると既に車は発進されていた。
「おい! 降ろせよ」
「降ろしません」
「寒田の癖に、何を強気でいるんだよ! ばかじゃねーの!」
ロックされたドアを開けようとしたら、止められた。
出発するのを諦めたのか、そのままドアを開けて後ろへ寒田が乗り込んでくる。
「何だよ!」
「何で、何でそんな傷をつけられてもKENNをあんな風に庇うんですか」
「別に庇ってねーし。お前にこの傷は関係ねえ!」
「関係ありますっ」
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