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この温かい腕の中で、ぬくぬくとまた笑ってキスをして、馬鹿な話で一緒に笑って、抱きあって、肩を寄せ合う。 そんなぬるま湯の中だったら、俺の気持ちも安定しただろう。 誰ももう俺の作品を、繊細で寂しいなんて、謳わなくなるだろう。 「でも、俺は強引で馬鹿で強引で、なのになかなか手を出して来ない癖に、俺から抱けって言っても悲しい瞳をするあの馬鹿が、強引な馬鹿が誰からも理解されないのはすごく悲しくなる」 強引だった思い出しかないが、それがあいつの愛情に飢えていた言動だと思ったら切なくなった。 あいつは、抱くことで愛を満たすことを諦めていた。 俺を抱くことを恐れていたのに。 KENNのことも寒田の事も、俺はまともに見ようとしていなかったんだ。 二人の声なんて聞こうともしなかったんだ。 ただ、自分が傷つくことから避けて、適当にしか向き合わないようにわざと冷めたフリをして。 ただただ、自分が傷つきたくなくて。 KENNを理解してやろうともしなくて抱かれたのだから、この首の痕は俺がKENNを傷つけた証拠にしかならない。 こうやって、弱った今、寒田にぶつかられて漸く自分自身の浅はかでダサくて、酷く醜い所を知ってしまった。 「ごめん。俺、気持ちを清算しねーとお前に優しくされる権利もねーよ」 「行かせたくないから俺はこうして抱き締めてるんです」 「ああ。だが、お前は俺が嫌がることはできねーよ」 力なく笑うと、無理矢理向きを変えさせられ、寒田の顔が近づいてくる。 唇が触れるか触れないかギリギリのラインで、寒田の動きは止まる。 18年ぶりに、まっすぐに寒田を見ることができたような気がした。 「ごめんな、緑」 「……太陽が謝らないでください」 「ん。でも悪い。涙が止まらね―」 ポロポロと子供のように涙を流すと、18年ぶりに寒田が笑ってくれた。

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