俺と寒田の話を聞いていたのかと一瞬焦ったが、KENNが言っていたのは自分の事だった。 「俺の気持ちはもう一つ、一人にしか向いてねぇよ」 あの行為を許すのと、KENNの気持ちを受け入れるのは違うと言う。 その話の例えなのに、俺はさっきの話にも当てはまって、情けねーけど少し動揺してしまっていた。 「俺も、俺の感情は一つしかないって思ってたけど、違った。俺がガキだっただけだよ」 「太陽」 「俺が許せないほど心が狭くて、傷つきたくないのに傷つけたと、傷つけたいから傷つけたじゃ意味合いが違うのに、俺は！」 後悔を叫ぶ俺の腕を、KENNは強く引っ張って、俺の顔を見下ろした。 「今は、俺の話をしてんだよ。そんなにあのマネージャーを傷つけたことを悔いてるのかよ。俺が目の前であんたの気持ちを知りたくて焦ってんだ」 寂しげにそう笑って言う。 でも 「俺だってもう訳が分からねぇんだよ」 ごちゃごちゃ、ごちゃごちゃごちゃごちゃ！ 「お前らなんかに出会わなければ！　出会わなければ！」 平穏で、退屈で、でもこんなに感情的にならずに済んだ。 ――傷つけることも傷つくこともなかった。 「この容姿か！？　女みたいでも、ちゃんと男みたいに胸が無くてついてるもんがあれば弄れるしそれでいいんだよな！　別に俺じゃねー。この容姿だけで」 「太陽」 荒々しくKENNが俺の顎を片手で持ちあげる。 「それ以上俺の惚れた奴の悪口を言うなら、キスして口を塞ぐぞ」 実際に、キスしそうなスレスレだった。 「したいならしろよ。首絞めプレイだって済んだ仲だしな。キスぐらい」 「太陽！」 余裕ぶったKENNらしくない口調は、俺が余裕が無いからだ。 俺がKENNにこんな声をあげさせてるんだ。 KENNは深く溜息を吐くと、俺の腕を離し、ポケットや胸元を探すが煙草は出て来ない。。 甘くない、苦い煙草の匂いは――大嫌いだ。 「そんなに過去の男にぐらつくなら、取り返すか、太陽を」 煙草を探すのを諦めたKENNが舌打ちして、俺に言う。