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十四
「いつまでも昔の男にぐらついてんじゃねーよ。馬鹿」
「ばっ 俺を馬鹿って言うのか、お前、殺す」
「あんたに殺されるなら、――ベットの上がいい」
そんなふざけた言葉を放つ癖に、全く目は笑っていなかった。
「ちょっと、待って」
KENNはスマホを取り出すと電話をかけ出した。
「俺、今から飛行機のチケット取れ。二枚、ファーストクラス」
KENNが仕事の話なのか、随分と偉そうにマネージャーらしき人に命令し始めた。
「場所は、沖縄」
「はあ!?」
俺が叫ぶと、人差し指で『しー』とウインクしやがった。
「期間? しらねーよ。アルバムも新曲も出したんだから休ませろ。……男と行くんだよ。うるせーな。 ってかお前が判断しろよ。いつまで滞在できるか、お前が判断しろ」
こいつ、本当に口は悪いし、やってる時も最低だし、どこも惚れる要素、ねーんじゃねーの。
「よし。三泊の旅行ゲットしたぜ。部屋も一緒でいいよな?」
「その前に死ね」
こいつ、俺を沖縄に連れて行くつもりか。
「俺、仕事溜まってるから行けねーぞ」
「この前、椿ちゃんのミスで頑張った分、きっと責任感じて椿ちゃんなら行かせてくれるぜ?」
「行かない。俺は乗り物に酔うから乗れないし、寒田は一週間で帰って来るのになんで追い掛けなきゃならんのだ」
「だって、太陽がうじうじしてるし、ちょっと揺らいでるし。
どうせ、寒田の事嫌って忘れようともがいてるぐらい好きだったんだろ?」
スマホの時間を確認しながら、時間ね―なと呟く。
「確かに一週間なんてすぐだろ? でも俺なら寒田が居ない間にアンタを落とす自信はある。ってか落とす」
落とすってなんだよ、馬鹿。
「そんなことしたら、あんた死ぬまでそのまま、素直になれないままだからな。選ばせてやるよ」
「選ばせる?」
「俺かあのマネージャー、どっちに抱かれたいか、選ばせてやるよ」
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