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十五
断る! いや、断りたい!
断る!
「おーい、KENN、親父に土下座するって言ったけどもう入っていいのか?」
ナイスタイミングで椿が帰って来た! 一緒に二階へ逃げてやる。
「逃げたら、その首の痕、椿に見せるぞ。あいつ、大好きなお父さんがキズものにされたって傷つくんじゃねーかな」
こいつ。
真面目な椿の性格を逆手にとりやがって。
「いつまでも、逃げてんじゃねーよ」
「!」
むかつく! KENNみたいな、ガキが!
ガキの癖に!
ガキの癖になんでそんな、そんな。見透かすようなこと、言ってんじゃねーよ。
「もう。聞こえてるなら返事しろよ―」
待ち切れず、椿が店に入ってきた。
「椿!」
「何? 親父」
少しだけ首を傾げる椿を、恨みは全くないが睨みつける。
「三日だ。三日留守にするから、その間にホームページとあとスケジュールを確認しておけ」
「三日?」
「沖縄行ってくる!」
俺の声に、KENNが腹を抱えて笑いだした。
むかつく。
それから慌ただしく荷物を用意して、空港まで俺のバイクで行った。
既にチケットとホテルの手配はしているらしい。
空港内のコンビニで、KENNが耳栓を買ってくれた。
「なんだよ、これ」
「乗り物酔いは、飛行機じゃしないと思うが一応な。耳栓してたら耳の痛さは抑えられるから」
「耳が痛くなるのか……」
頭痛じゃなくて、耳か。
たださえ、密室の匂いとか駄目なんだけど、その上気圧の変化で耳が痛くなるとかもう最悪。
「大丈夫。俺に抱かれた時の圧迫感よりは痛くねえ」
「お前の発言が痛い」
やっぱ帰りたい。今すぐ、帰りたい。
「だが、太陽なら行くだろ?」
見透かしたように笑うKENNが、――苦手だ。
こいつには、どれぐらい俺の本音が見えているんだろう。
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