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十八
「すげえ面白くない」
「大人しく聞け、あほ」
海の水を蹴りあげると、KENNは冷たそうに逃げて行く。
「この首の痕を見て、寒田が俺を傷つけたくねえって、散々付き離した俺を包み込んでくれようとしたんだ」
あいつは、多分、馬鹿なんだと思う。
18年も馬鹿なままなんだと思う。
馬鹿で、あほで、どうしようもなく純粋で。
不器用だから、嘘をつくことしか思いつかなかった馬鹿。
その嘘が、俺も自分も傷つくって気付かない馬鹿。
「お前のこの歪んだ愛の証やがら、このままもう交わることもなかった俺と寒田の距離を縮めてくれた。――ありがとう、KENN」
逃げて逃げて、俺だけ仕事で奴のぬくもりを忘れようとしてたけど、
確かにあったんだ。
確かに、嘘から生まれたけど、俺と寒田の間には、ちゃんと愛があって、大切で大切で。
俺だって、寂しいバラバラの心を寒田に集めて貰って埋めてもらったくせに。
じぶんだけ被害者のフリをして、逃げた。
「だから、お前には――んっ」
話を終える前にKENNは俺の顎を掴むと、持ち上げて深く深くキスをしてきた。
俺が目を見開いて、驚き放心している間に、角度を変えて侵入してくる。
角度を変えて、隙間を探し、離れないように舌で繋ぎとめて。
「んんっ」
熱い舌が絡まるのが、もどかしい。
そこだけ火傷ができていく。
KENNの余裕のない、荒い動きが、いつものこいつらしくなくて、堪らなく愛しいと可愛いと思う。
だけど、それに応えてやるのは不誠実なんだと思った。
一夜限りの逢瀬ならば、応えて、俺ものりのりでやってやるけど。
それをKENNは望んでいない。
「あのさ、抵抗しないのにノッてくれないって酷くね?」
「お前はもう少し、自分が有名人だと自覚したほうがいいよ」
「俺は、――目立たなきゃ忘れられてしまいそうなほど、小さいからな」
「は?」
似合わない、気弱な発言に思わず呆れたら、足を払われた。
そのまま、冷たい海と砂の間に背中を押し倒されて、俺を覗きこむデッカイ子供を見上げる。
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