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十九

「太陽の、傷付きたくないから強制はっちまう姿が、痛々しくて愛しくて、――俺のモノにならないのがもどかしい」 「俺をモノとかいうな」 「――抱きたい」 KENNも少し濡れたらしく、服の中に侵入してくるKENNの服の袖が濡れて、肌を掠めるのがピリピリと痛む。 「此処で?」 「部屋まで持たねえ。今、抱いておかなきゃ、逃げられる」 逃げねーよ。 こんな所で、抱かれたら俺らは終わる頃凍死してると思うぞ。 「えすえむぷれい以外なら、別に良いんだけどな、――はっきり答えを出せてないのにお前に抱かれたら今度こそ傷付く奴がいるんだよ。面倒くせえけど」 「それって、あのだっせえ男?」 苛々と、感情を押し殺すようにKENNが言う。 KENNの髪から流れる水が、涙の様に俺の頬に落ちてくる。 「あいつと、お前」 KENNは、何かの儀式の様に、青くなった痣に舌を這わせると、俺から離れた。 そして、少し離れた場所へ脱ぎ棄てていたらしい上着を、起きあがらせた俺の肩へかける。 最初から上着を用意しているあたりがKENNらしい。 「ちょっと頭冷やしてくるから、先に帰ってろ」 「む。命令すんな」 自分だって濡れている癖に、煙草を口に咥えると、手をひらひらと振りながら逃げるように待ちの方へ消えて行く。 ――不器用なのは、俺もKENNも一緒なのかもしれない。 仕方なく、俺もホテルの方へ戻る。 シャワー浴びて寝よう。 そもそもの目標の、寒田を追いかけると言う目的が飽和状態になっている。 俺はあいつの連絡先なんてとっくに消してしまったし、あいつだって俺に一週間後だと言っていたから電話なんてかけて来ないだろうし。 KENNなら何かアテがあうそうだから、なんとかするんだろうけど。 「太陽?」 振り返ると、コンビニの大きな袋を二つ持った寒田の姿があった。 どさりと袋を落とすと、目を見開いて驚いている。 「な、何で? って、濡れてる」 「に、人魚だから泳いできたんだよ」 突然過ぎる再会に、動揺して変なことを口走ってしまった。 や、なんで寒田がこのホテルにいるんだ? KENNは知っててこのホテルにしたのか? 数時間前に別れた寒田が、目の前にいる。 「風邪引きますよ。その、――俺に会いに来てくれたんですか?」 動揺しているのは寒田も一緒の様で、あたふたと意味もなく両腕を動かしている。 「別に、KENNが――」 KENNの名前を出した後、ハッとする。俺は、沖縄まで来たのをKENNのせいにするつもりなのか?    自分の意思で来た癖に。 「いや、お前に会いに、来た」 言った瞬間、顔に陽が付いた様に熱く、冷や汗まで出てきた。 「――太陽」 「雷也さんっ」 その時、――聞きなれた声が聞こえ、俺は寒田にホテルの柱へ引っ張られそのまま二人で隠れる。 一体何が起ったのか分からないでいると、――走って来る二人の足音が重なるのが聞こえた。 「親父が沖縄に行ったから、俺も我慢できなくて来てしまいました!」

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