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二十一
この野郎、ぶん殴ってやろうか。
ターゲットを雷也から、雷也と寒田に変更してやる。
俺が――俺が沖縄まで追いかけて来たのは。
「おいおいおい。道の真ん中でイチャイチャとは、ちょっと危機感が足りねぇんじゃねーのか」
俺の気持ちを代弁するかのごとく登場したのは、KENNだった。
雷也と椿を交互に見て、小さく『へえ』っとにやける。
「お留守番してなきゃ駄目じゃねーか、椿ちゃん。狼に食べられにきたのか?」
「お前、全然例えになってないからな」
「そうだな」
そうだよ。雷也が狼なのは、俺の可愛い椿が立証しているだろ。
や、でも雷也のほうが顔は綺麗だし、椿はイケメンだぞ。
「なあ、あいつらってどっちが抱かれる方?」
「ぶっ」
「吐き出すなよ。気持ち悪いな」
椿は性格は可愛いんだけど、見た目は硬派だろ。
KENNに雷也のことで殴り合いの喧嘩するぐらいに。
「雷也みたいなクソ生意気な野郎を抱くってのも、いいかもな。屈服する姿が見てみたい」
「なんか、考え方がKENNみたいですよ」
寒田の冷たい視線に、何故か冷や汗がでる。
そう言えば、KENNとは最近何故かよく一緒に居たりしていたしな。
「こんな、――沖縄まで来てまでKENNへの気持ちを整理したかったんですか?」
「はあ!?」
「貴方が俺の為に行動するわけないですし。――KENNの為ですよね」
こいつっ
一体何を。
余りにも傷付いた顔をするから、怒鳴り散らすわけにもいかない。
それぐらいはまだ、俺にも良心があった。
「こんなところでイチャイチャしてたと週刊誌にばらされたくなきゃ、どっちか一緒に寝ろよ」
お前の脅迫の仕方がいちいち陰湿だよ。ばーか。
「親父が一緒でしょ? 俺達に声かけないでください」
椿の声に刺があるのを、含みを込めた笑みでKENNが馬鹿にする。
「お前の親父は綺麗過ぎるから、雷也みたいに乱暴にしても壊れない奴がいいんだよ」
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