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二十二

それは冗談ぽく言ってはいるが、KENNのまぎれもなく本音だということがすぐに分かった。 本音だ。 俺の代わりを探そうと。 「ふざけんなよっ」 寒田を突き飛ばして、三人の前に現れると、椿は息を飲んだ。 「えっ?」 フードで顔を隠していた雷也がフードを外し、目を見開く。 「椿の父ちゃん? えっ? 兄さんとかじゃなくて?」 「いちいち驚くな。その台詞聞き飽きたから」 そうか。俺が逃げ回っていたせいで、雷也は俺を見るのは初めてなのか。 顔とは裏腹に冷たい言葉を吐く俺に、ちょっと驚いてやがる。 「KENN、お前、誤解してるみていだから言っとくけど」 「うん?」 「俺が選ぶ立場なんだからな。お前は俺に振られるのをいちいち怯えてたら良いんだよ」 「……うん?」 余裕の顔で笑っていたKENNが、そのままの表情で首を傾げる。 いちいち、どうしようもない男だな。 「その上着の相手に俺が負けるとでも?」 「上着……ってうわっ。こいつは気にするな」 ってか、お前が海岸で押し倒すから濡れたんだ。 そのせいで上着なんか着てしまったし。 「もうなんか色々最悪だ。俺はもう寝たい」 「雷也との御対面が散々になっちまったよな」 「お前が言うな。早く部屋戻るぞ」 こんなに萎えることが次々起るんだ。 流石にKENNだって部屋に戻ってやりたくもねえだろ。 「あ」 ホテルのロビーに飾っている花を見て、思い出しちまった。 俺が雷也を嫌いなもう一つの理由。 振り返った俺は、助走を付けると椿とイチャイチャしている雷也目掛けて思いっきり飛び蹴りした。 「親父っ」 「あら。意外。倒れね―でやんの。面白くない」 雷也は背中を押さえつつも、踏ん張りやがった。 「何すんだよっ。いってーなあ!」 「椿が花を衝動的に食べたあの日の花束は、こいつの悪戯だったんだよ。忘れてた。いつかボコボコにしてやろうって思ってたんだよな」 「ええええっ。そうなの?」 「まじか。あの時の花が」 何故か俺の言葉で二人が頬を染めた。 なんかより一層二人の仲が燃えあがっているんですが? 「なんか……運命みたいだな、まじで」 「そ、そうですね」 「これで歌詞書けよ。俺が悪戯したおかげで俺らは出会えたわけだし」 二人が盛り上がっているので、もう二人とも纏めて蹴ってやろうとしたら、KENNと寒田に止められた。

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