二人の、酒を飲む手が止まる。 それが、俺の口を更に重くしてしまう。 「何で俺なんかに執着すんのか、俺には理解できねーし、俺はお前らに同じぐらい気持ちを返せるかって言ったら無理だし、面倒はパスだし、お前らはこのままじゃ自分の傷もまともに癒せやしねーよ」 「俺に、太陽以外に弱みをぶちまけろと？　太陽は受け止めれねーって逃げる気か」 「そうじゃない、けど。や、お前の性癖全開のプレイはお断りだけど」 駄目だ。答えが纏まらない。 そもそも、俺はその答えを探しに、――自分の心の底にあるものを知る為に此処にきたんだ。 ぐたぐだ言い訳ばっか言っても、結局は解決しねえ。 「別に今日、明日で太陽の気持ちが分かるなんて思ってねーよ。俺はアンタに俺を見て貰いたかったのかもしれない」 そう言ってKENNは、立ち上がった。 「このBAR、禁煙みたいだから１０分で戻る」 分かりやすく空気を読んだ行動に、思わず脱力してしまいそうだ。 案の定、二人きりになっても、寒田と何を話していいのか分からない。 そもそも１８年前、俺らはいつもほぼ毎日一緒に居たけど、何を話していたのか。 それすらも思い出せない。 それすら分からない。 この過ぎた時間は長くてすぐには埋もれないかもしれない。 KENNとは共通のバイクの趣味があるし、あいつ会話も上手いから沈黙なんか気にした事なかった。 ――こんな風に意識なんてしたこと無かったんだ。 「KENNだけど、あいつ暴力野郎ってイメージだったけど、もう田沼にも期待しないみたいだし、暴力はしないと思うぜ」 「貴方がそう言うなら、――そうなんでしょうね」 「お前らも誤解してるなら解いてやれよ。性癖は許してやれ」 「貴方は俺にはそんなに寛大な心で許してはくれなかった」 寒田がグラスを置くと、苦しげに瞳を揺らした。 「俺は貴方に許されたかった。許して貰って――隣に居たかった」 「寒田」 「でも今は、苦しいです」