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二十七

結局また、一人海を眺めている。 窓もないあのBARは息苦しいだけの空間だった。 海を見ながら、空が海に溶け込んで、何処から区切っていいのか分からなかった。 きっと溶け込んでもう人には判断できないんだ。 「疲れたと持った瞬間に、終わってしまったように感じた」 独り言のように呟くが、俺の後ろから煙草の匂いが漂ってきていたので分かっていた。 「終わってしまったんだよ、俺はきっと。ぶつかりもしないで」 「沖縄に来て、それでけ分かれば上等じゃねーか」 「此処に来たら、はっきり分かると思ったのに、更にマーブル状に悩みが絡み合って、逃げてしまいたくなる」 「それは――あんたが繊細だから仕方ねーよ」 「お前は27年間、こんな風に心が空っぽだったのか?」 俺はやっと初めて、KENNを振り返ってそのサングラスで隠した顔を見上げた。 「俺が18年、空っぽを仕事や椿への愛情で埋めていた間、お前も空っぽを埋めてきたのか?」 「空っぽかどーか分からね―けど、27年、アンタの目に映る通りに生きてきたよ」 「空っぽの部分を埋めるのって、仕事でも身体の関係でもねーんだ、きっと」 「ああ。そうだな」 煙草を灰皿に押し付けたKENNが隣に座った。 煙草のこの匂いは大嫌いで大嫌いで堪らなかった。 「俺の空っぽの部分を太陽が、太陽の空っぽの部分に俺が。そうしたら、俺らって二人で一人になれると思わねー?」 さらりと、海の波の音でかき消されてしまいそうなほど、軽くKENNは言った。 笑って、自分の弱さを認めて曝け出したんだ。 「KENN」 「アンタをちゃんと抱いてみたい。暴力が気持ちいいなんて馬鹿な真似、もうアンタにはしたくねー」 「……沖縄に来たから遠慮せずにズバズバ言ってやがるな」 「あのマネは馬鹿で何も見えてね―から、焦ってるんだよ、俺。太陽が此処まで来たのは寒田の為だってちょっと不利だから」

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