172 / 206

「それは、魅力的すぎて土下座して頼んでみたいことではあるけど」 「お前ならそう言うと思ってた」 「でも俺は、太陽だけが帰って来て愛を囁いてくれると思ってたんだけど?」 こんなにKENNが動揺しているのを初めてみてしまった。 意外だ。けれど、楽しい。 「俺、こんな奴なんだよ。あんま、この身体を大切にしているわけでもないし、嘘ばっか付いて逃げる癖に、他人の嘘には傷付くし。だから、本当の俺を知って、お前らに嫌われようかなって」 緑を引きずりこんで、そのままベットへと向かう。 ちょっとだけ、胸が弾んでいたのは内緒にしよう。 36年生きてきた、今最高にスリルが気持ちいいと体が疼いていた。 身体を、肌を、温もりを重ねる行為に。 必要なのは愛だけではない。 「来いよ。傷つけたお詫びに、――二人に何でもしてやるぜ?」 溜息を付いて、煙草を灰皿に押し付けたKENNがそのままベットに片足を乗せた。 「まあ、いっか。昔の男に、太陽が喘ぐ姿を見せるって楽しそうだよな」 挑発的にそう言うと、ちらりと視線を緑へ向けた。 KENNは、優しい奴だと思う。 俺の馬鹿みたいな挑発に、乗っかってくれた。 「そこで見てるだけでも良いけど、――KENNの背中の傷痕を見て良いのは俺だけだからな」 KENNの背中に腕を回してそう言ったら、緑も観念したようにネクタイを解いた。 「最後まで可能性はあるってことですね」 「可能性?」 「暴力的にな愛より、――気持ちよくさせてあげますよ。太陽」 解いたネクタイが俺の視界で止まった。 「肌で感じて下さいね」 ネクタイで目隠しされたら、それだけで、しわじわと背中が甘く痺れていった。 「――んっ」 最初にキスしてきたのは、KENNだった。 啄むような、探って来るような、くすぐったいキス。 苦い煙草の味がしたのですぐに分かった。

ともだちにシェアしよう!