「追いかけないのか」 俺の身体に、がっしりしたKENNの身体が絡みつく。 その温もりが気持ちいいと思う俺は、壊れてしまったんじゃないだろうか。 やっと壊れたのだろうか。 「今、やっと１８年燻ってた気持ちと別れたんだよ。やっと、――あいつを開放できた」 「じぇあ、泣いてんじゃねーよ。ムカつくじゃねーか」 「むかついてんじぇねーよ！　こっちは１８年の気持ちをそんな一日で忘れなきゃいけなくて――」 「むかつかせろよ。俺はこれからずっと一緒にいるんだろ？　ムカつかせろ」 ん？ 「俺、お前と一緒に居るとか、言ったっけ？」 「……。犯すぞ、こら。まて、お前」 KENNの声が低くなってが、俺は緑への思いをふっ切ったわけだが、だからと言ってそんなすぐにコイツの元へほいほい行くといくのか？ それは、１８年間の思いに唾を吐きかけるような行為じゃねーの？ 「ぐちゃぐちゃ、何考えてんだよ」 くるりと向き合うように抱き寄せられる。 頬をポリポリ掻きながら、隠してもしょうがねぇから言うけどさ。 「ほいほいお前に鞍替えするのって、どうだよ」 良い歳したおっさんが、三人で遊んでおいて――。 「ってか、お前はそんな奴でまず良いのか」 「俺は、１８年無視られた上に逃げられたら、あんたを高級ホテルの一番上で閉じ込めちゃうよ？」 ふぁーと大きく伸びをして、俺ごと起き上がると、啄むキスをした。 重なったキスは――昨日の夜を思い出す様な、獣臭い匂いを纏わりつかせている。 「俺は、ずるずる待つぐらいなら、すぐに恋人にして欲しいし、エロくてインランな太陽も大好きなんだけど？」 「すっげ。俺今、かなり口説かれてる？」 KENNの言葉尻が、今すぐ踊りだしそうなほど嬉しそうだ。 こっちは色々複雑なのに。 「口説いてる。ってか、ムカついてる。他の男の事で泣いてんじゃねーよ。俺はそれは慰めねーぞ。慰めねーし怒るし待たないし」 「お前なあ」 「でも、俺はもうアンタを泣かせないよ」