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四
間が鋭いというか、――昨日の状況でそこまで分かったのかと思うと、やはり俺の目に狂いはなかった。
雷也は申し訳なさそうな顔をしている。
そこまで――誰から見てももう俺に勝ち目はないと思うのか。
でも、今朝、太陽は泣いていた。
俺が服を着るのを見ながら、身を引いてくれたんだ。
この先、俺の言動に嘘が無いか不信が常に付きまとう。
その中で、俺は太陽の信頼を勝ち得る為にずっと愛を囁く。
その関係性の拙さに、離れることを選んだだけで。
好きでも、好きだけで傍に居るのが、太陽にとっては辛いんだ。
俺はそんな太陽を見るのが辛い。
俺が望むのは、――過去の呪縛から解放された今、のびのびと生きて欲しいだけ。
繊細で、一人で生きるにはあんなふうに強がらなくては自分を守れない繊細な人。
「雷也のせいじゃない、と言えば嘘になるけど、決めたのは俺達です。貴方には何も関係はありません」
太陽を好きな気持ちは相変わらず心の中にあるけれど、朝起きた時には――未練もなくすっきりした気持ちでしたから。
ただ、思う。
太陽は自分の気持ちを素直に言えるのだろうか。
素直に、ちゃんと意思表示できるだろうか。
俺が苦しめた18年は長い。
恋愛の仕方を知らない太陽に、まともな恋愛が出来るようには思えない。
屈折した者同士、特に言葉にすること、態度に表す事は大事だ。
だが、太陽はそんな恋愛を知らない。
そして、18年、諦めて逃げてきた。
KENNが、そんな太陽でいいと受け止めるならいいが、アイツだって偏屈で、愛に飢えている。
「ぼーっとしてんじゃねーよ。じゃあ、俺はもう気にしないからな。良いな!」
こんな、人の事なんてどうでもよかったガキの雷也だって、俺達の事を心配してくれているけど。
――俺は心配しすぎだ。
あいつらだって傷付いて傷つけても、――前に進まなければいけないんだから。
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