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六
Side:太陽。
椿の事やKENNの事、沖縄から帰ったら山の様にある仕事の事を思うと、素直に言えなくて、俺は馬鹿だと思う。
KENNを選ぶと言ったものの、アイツにはっきりとした言葉はあげていない。
一緒に住むのも、面倒だと思う反面、少しだけ怖かった。
こんな歳で情けないけれど、恋愛の終わりが怖い。
あんなに好きだ好きだ言ってくるKENNが俺の前から去って行く時はどんな言葉が出てくるのかとか。
俺は保身に入ってしまっていて、本当のKENNを大切にしてやれる自信が無かった。
自分のことばかり。
てか、恋愛って何すんだ?
俺とKENNは、今まだすぐに恋人にはなれないと俺が思っているのは、緑への誠意なのか。
俺がまだ、逃げたいからなのか。
「いいぜ、一緒に住もうぜ」
俺は髪を洗い流した後、丁寧にコンディショナーを塗るKENNに、静かにそう言った。
「まじ?」
「ただ、お前が住んでるホテルに比べたら犬小屋みたいだし、椿が雷也の所に行くまでは待て」
「あーー。椿ちゃんの代わりか。それでも嬉しいけど」
ふっと鼻で笑ったKENNの顔が破綻する。
「まあ、良いよ。ただし、俺は家族を知らないし、物心付いてた時には、どうやって死なないかって生き延びる方法を考えてたからさ、フライパンの使い方も知らねーよ。料理も洗濯も、掃除も何も」
ホテル住まいな時点で、それぐらい予想はできたけど、そこをKENNが負い目に感じているなんてちょっと意外だった。
「だから、全部教えてくれよ?」
「ああ。覚えて貰わないと俺も困るしな」
そうだ。
イベント時期のクソ忙しい時は、樹海のような家になることも言わなくては。
掃除も洗濯も忘れて仕事にのめり込んでしまうから、ゴミが溜まってばかりなんだ。
「元気があるなら、ツーリングかドライブ行かねぇ? 海沿いをずっと走ろうぜ」
「お、いいな」
「ただし、車か自転車しか無かったぞ」
「自転車はケツが痛い今、パスだ」
俺がそう言うと,KENNは下品な声で笑いやがった。
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