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九
その言葉に数秒、俺が瞬きしたら、KENNの腕が俺の首に伸びる。
そのままベットに沈められても、俺は抵抗なんてしなかった。
「もう、いいんじゃねーか? 此処にアイツを追って来た瞬間からアンタはアイツを許していて――未練が合ったんだろ?」
「違う。ちゃんとさよならを言う為だ。それはお前が提案したことでもあるだろ」
「アンタはアイツを幸せにする勇気が無いから俺で妥協してんだよ。でもな」
俺に跨りながら、それほどきつくもない締めつけで首を閉めながら、KENNは笑う。
「でも、俺はアンタに素直になって幸せになって欲しいから言う。アイツへちゃんと言葉を伝えて来いって」
違うのに。
KENNは俺から身を引こうとしている。
違う。
俺は――。
「待てKENN。本当に俺はお前が――」
「良いから行けって! 行けよ!」
「ひ、ぅ」
言葉を伝えたくても、KENNの腕の力が強まり首が締まって上手く言葉が出て来なくなる。
「時々、背中の傷が疼く時があるんだ。太陽が俺に本気になればきっとアンタは傷付くことが多くなるだろ。だから、――ここでもう俺はアンタが本気で好きなら、背中を押してやらなきゃいけねーんだ」
だから、人の話を聞けって!
ジタバタ暴れたけれど、KENNの力が凄くて。
いつもなら、相手が攻撃してきても、距離を取っていれば俺が負けるわけないんだが。
油断した。
KENN。
てめぇ、覚えておけよ!
それでも、振り回した俺が悪いんだろうけど。
息が上手く吸えなくなって意識が朦朧としてきた。
KENNはそのころにはとっくに首から手を離していて。
甘くて苦いキスをしてきた。
俺が伝えないからだ。
俺が――。
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