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三
Side:KENN
くそ面倒だと思う。
俺も俺の性格が嫌になる。
「け、KENN、機嫌を直してちょうだい。事務所の方針なのよ」
その方針とやらが昔から、俺の性格にぴったりの根性の悪い方針ばかりでソレが気に入っていた時期もある。
雷也と毎回CDの発売を揃えて話題性を狙うとか。
田沼のじいさんに、俺が隠し子だと週刊誌に売られたくなければ歌詞を提供しろと持ちかけたり。
今回は、――田沼もいない、雷也とも発売日が重ならない。
だから、俺とCDのプロモーションビデオで共演したアイドルとのゴシップを持ちかけられた。
アイドルの女は、週刊誌のカメラマンがスタンバイしてるなんてきっと知らないんだろう。
俺が自分の住み家にしているホテルまで一緒にタクシーに乗るだけでいい。
そう言われて、今すぐこの馬鹿マネージャーの顔を殴って、売り出し中のこの胸がでかいだけのアイドルに暴言でも吐いて滅茶苦茶にしてやろうかと思う。
「KENNさん、寒田緑って確か雷也の事務所のモノですよね?」
「ああ?」
喫煙所でこの先の事を苛々と考えておたら、スタッフの一人に話しかけられた。
タイプでもない、大人しそうな男だ。
「ああ、あの清純派ばっかのうちと反対の真面目そうな事務所の坊ちゃんな。ソレがどうした?」
「あの、このスタジオの入り口に居るみたいなんです」
「寒田が? あいつはまだ沖縄のはずだろ」
――それに今頃、太陽が傍にいる。
回りまわって――18年かけてやり直した初恋の相手同士。
きっと今頃上手く入ってるはずだ。
太陽の首を絞めてまで、――別れて来たのだから上手くいかないのはムカつくが、うまくいくのも――複雑だったりする。
でもこうでもしねぇと、あの素直じゃない太陽は、緑の所へいけないだろ。
「あの、その寒田さんから、KENNに電話を変わって欲しいって言われてて」
「は?」
どうしてこいつはソレを早く言わねーんだよ。
「今、忙しいって切れ」
「でも、大事な話だって」
スタッフが、携帯を俺に差し出す。
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