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四
色々な考えが頭を過ったが、それを全て頭から振りはらい、忌々しく舌打ちしながら通話ボタンを押す。
「何だよ」
『今度、太陽に酷いことしたら許しませんよ』
「説教か、うぜーな。まあ、仲直りできたんだろ?」
電話なんかせずにさっさとお楽しみしてれば良かったのに。
『俺じゃ涙を止めて上げられませんでした』
「…………は?」
『今、貴方のいるスタジオの入り口にもう太陽は居ると思いますよ』
――は?
「KENNさん、その携帯俺のです!」
気づけば、携帯を強く握り締めていた。
止めてなかったら、壊していただろう。
下に居る――。
太陽が?
何で俺の所に。
寒田の方が幸せになるのに。
俺は――俺は駄目だ。
求めすぎて、自分をセーブできなくなる。
お前を抱き壊してしまうかもしれない。
こんな時でさえ、まだ自分が選ばれる自信がないから、笑っちまう。
「KENNさん?」
「で、そのクソアイドルが仕事の終わるのあと何時?」
「く!? 今、KENNさんのCDのプロモの話をラジオでして下さってるんですよ? あと、一時間はかかるんじゃないですかね」
一時間、か。
「それより、今の話、少し聞こえたんですが、良いんですか? 誰か下で待ってるならスタジオの中に入って頂いても」
「いいよ。一時間で――諦めてくれた方が俺も救われる」
一時間も出て来なかったら、きっと諦めて帰ってしまうだろう。
それで、寒田が慰めて御終いにしよう。
俺の方から欲しくて手を出した。
届かないと思っていたから、こっちを見てくれたのは嬉しいけど。
何回も駄目な男に振りまわさてちゃ、お前が幸せになれねーんだから。
これで、いい。
だが――……。
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