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五
Side:太陽。
雨が降り始めていた。
スタジオの前を、色んな傘をさした人が歩いていく。
それを最初はぼーっと見ていたけれど、疲れた俺は体操座りで顔を足の上に埋める。
そうだ。
面倒くせえんだ。
人と関わるのも。
簡単に心を揺さぶられるのも。
疲れるし、怖いし、――面倒だし。
自分の感情がコントロール出来ないなんて気持ち悪いじゃねーか。
人混みが気持ち悪かったのは、俺が生きている奴らと関わわるのが怖かったからだ。
こんな俺に近づいてくれるとしたら、緑みたいに嘘をつくか
お前みたいに全力でぶつかってくれる奴しかいねーんだよ。
お前しか、いなかったんだ。
最初から、冗談みたいに俺に全力で関わって来たのは。
俺は確かに面倒臭がりで、全力で逃げてばっかで、――本当にしょうがねー駄目な奴だけど。
これ以上、もうこの感情を失いたくない。
やっと生まれた感情を、逃げずに受け止めるから。
隣にいて、くれないだろうか。
雨が降る。
全て、足音や会話も掻き消すような足音が。
スタジオから何人も人が出てくる。
何度か警備員が俺に退く様に注意してきたが、緑の事務所のあの若い男が説明してからは注意されなくなった。
雨が俺の苦手な雑音を消し去ってくれてからは――ずっと通りを眺めていた。
何時間も、何時間も。
もしかしたら、KENNは裏口から帰ったのかもしれないけど、それでも動きたい気分ではなくて。俺はそのまま、ぼーっと見ていた。
まるで、今までの俺への行いの罰が、降っているような寒い夜。
「太陽」
その一言で、冷えた体温が上昇している。
「……来てんじゃねーよ。馬鹿」
火も付けてない煙草を口に咥えて、そいつは情けない笑顔を顔に貼り付けていた。
「遅い? もう遅-か?」
両手を広げて、抱きしめてとせがんだ。
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