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Side:太陽。 雨が降り始めていた。 スタジオの前を、色んな傘をさした人が歩いていく。 それを最初はぼーっと見ていたけれど、疲れた俺は体操座りで顔を足の上に埋める。 そうだ。 面倒くせえんだ。 人と関わるのも。 簡単に心を揺さぶられるのも。 疲れるし、怖いし、――面倒だし。 自分の感情がコントロール出来ないなんて気持ち悪いじゃねーか。 人混みが気持ち悪かったのは、俺が生きている奴らと関わわるのが怖かったからだ。 こんな俺に近づいてくれるとしたら、緑みたいに嘘をつくか お前みたいに全力でぶつかってくれる奴しかいねーんだよ。 お前しか、いなかったんだ。 最初から、冗談みたいに俺に全力で関わって来たのは。 俺は確かに面倒臭がりで、全力で逃げてばっかで、――本当にしょうがねー駄目な奴だけど。 これ以上、もうこの感情を失いたくない。 やっと生まれた感情を、逃げずに受け止めるから。 隣にいて、くれないだろうか。 雨が降る。 全て、足音や会話も掻き消すような足音が。 スタジオから何人も人が出てくる。 何度か警備員が俺に退く様に注意してきたが、緑の事務所のあの若い男が説明してからは注意されなくなった。 雨が俺の苦手な雑音を消し去ってくれてからは――ずっと通りを眺めていた。 何時間も、何時間も。 もしかしたら、KENNは裏口から帰ったのかもしれないけど、それでも動きたい気分ではなくて。俺はそのまま、ぼーっと見ていた。 まるで、今までの俺への行いの罰が、降っているような寒い夜。 「太陽」 その一言で、冷えた体温が上昇している。 「……来てんじゃねーよ。馬鹿」 火も付けてない煙草を口に咥えて、そいつは情けない笑顔を顔に貼り付けていた。 「遅い? もう遅-か?」 両手を広げて、抱きしめてとせがんだ。

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