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六
涙で視界が滲んできて、言葉が、涙で邪魔されて伝えられない。
でも、言わなくちゃ。
この衝動を言葉で伝えたい。
「嘘でも、いい。嘘でもお前ならいい」
「太陽」
「一生、傍に居るって言え」
馬鹿だ。
強がって上手く甘えられなくて、こんな見捨てられた今も、偉そうにそう言って。
「泣きながら――言ってんじゃねーよ」
簡単に俺を抱き上げたKENNの傷だらけの背中を、俺は強く抱きしめた。
「お前の傷さえも愛しいよ、KENN」
その傷だらけの背中で、一人で生きてきたお前が、愛しい。
傍に居たい。
俺が欲しいって言え。
「何もかも投げ捨てて来ちまった。アンタのせいだ」
苦笑しながら、KENNも俺の背中を壊しそうな程強く抱きしめた。
「知らねーよ。俺、絶対に離さないし、もう三人でとかもしねーし。浮気とかまじ心狭いぜ?」
「……うるせー。それでいい、それでいいから、お前が良いんだよ、馬鹿野郎」
頭の中が、滅茶苦茶だけど。
会いに来てくれた。
こうやって追いかけてきた俺を抱きしめてくれた。
それだけで、俺はもう、満足なんだから。
それで、おれはもう、何もいらねぇよ。
「今日は、絶対優しく出来ねぇからな」
そのまま俺を肩に抱きあげて、KENNが笑う。
その笑顔があまりにもへったくそで、俺も思わず笑ってしまった。
「寒いって、その台詞」
でも俺達には、言葉が足りないから、もっともっと耳が溶けてしまってもいい。
甘い言葉をちょうだい。
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