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エピローグ?

「なあ、焼きそばなら二人で作れるんじゃねーの?」 「お前、フライパンも持ったことねーんだろ。止めろよ、怖い」 「でも、二人で何か作りてーじゃん」 KENNが勝手に俺の家の冷蔵庫を開けて、中を眺めている。 電気代が掛るから止めて欲しいんだけど、こいつは冷蔵庫の中身に感動していて――いや、家のもの一つ一つに感動していて手が付けられない。 「椿ちゃんと入れ違いだったけど、驚いてたな、俺の顔を見て」 鳩が豆鉄砲を食らうと言ったような、俺とKENNの顔を交互に見る椿に、『バイクでまた走るんだよ』と言い訳臭くなった自分が嫌だ。 「しょうがねーだろ。お前、嫌われてるんだから」 「言えてるっ」 KENNが笑いながら、ソファに座っていた俺の隣に座る。 重たいKENNの身体に、俺の隣がキシキシと沈んでいく。 「……」 「……」 自分の家で、隣にKENNで、――セックス以外の恋人としてのコミュニケーションは俺は未だに酷く苦手で分からなくて。 隣に座られたら、変な沈黙と、ドキドキして落ち着かなくなる自分がいる。 恋人――とか言われると、大声で叫んで逃げ回りたくなる。 恋人って言われて、KENNの顔が思い浮かんでしまう自分の脳内も消し去りたい。 この――KENNの幸せそうな甘ったるい空気も、居心地が悪くて、おかしくなる。 分からなくなる。 どうしていいのか、俺にはもう分からない。 「太陽?」 「何だよ」 「可愛いな。緊張してる」 「ばっ! もうすぐ37のおっさんに可愛いとかお前、馬鹿だろ!」 クッションを投げつけるが、KENNの方は嬉しそうで、全然堪えていない。 「お前、マジでムカつくからな」 「光栄だな。身体以外でも――繋がれるってこんなに嬉しいんだしな」 ニヤニヤしているKENNが何だかムカついて、ソファに押したおす。 「そうか。じゃあ、俺の身体見ても反応するなよ!」 「そうやって太陽はすぐにソッチに持っていこうとするからなあ」 「すいません。イチャイチャを始める前に失礼しますよ」 「!?」

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