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四
「見て見て、テレビに俺が出てるから」
二階へ降りて、テレビを付けさせられるとソファに隣同士で座る。
緑とのことは、深く追及して来ないのはKENNらしい。
「何で隣に居る奴をわざわざテレビで見ないといけないんだよ。うわ、雷也もいるし」
「いいじゃん。新曲が、発売日前だけど、映画の主題歌になるんだから」
ふうん。
サングラスにTシャツにジーンズとラフな格好のKENNなのに、――その音楽番組の中で一番かっこいいと思ってしまう自分が嫌だ。
老眼かもしれない。いや、老眼だ。
『今日は、KENNさんの新曲初披露ですね。タイトルの由来をお聞きしてもいいでしょうか?』
『俺の恋人のイメージってとこかな』
『ぶほっ』
『汚ねーな、雷也。屁でも我慢してたのか』
『お前の寒いコメントに驚いたんだろ。キモイんだよ』
……?
KENNと雷也のコントなんてどうでも良いんだけど。
てかお前ら、いつの間にこんなに仲良くなってるんだよ。
「お前ら、どんどん仲良くなっていってるな」
「ああ? あんなクソガキ、もう抱きたいとも思わねーよ」
そんな話じゃねーよ、と思いつつテレビに視線を戻す。
KENNと雷也の言い争いに、共演者も苦笑いを浮かべている。
同い年の雷也にクソガキって――こいつ、俺の前では最初もっとクールじゃなかったか?
KENNと雷也のコントが人気になって共演が増えたら嫌だなって思いつつも、テレビはKENNの新曲へなんとか話題を戻していた。
『新曲のタイトルは『太陽』だ。テレビの前のアンタに捧げるよ』
キャーーっ
客席から黄色い声援が飛びかう中、サングラスをずらしてKENNがカメラの方へ視線を送る。
「……」
「どーだ? 嬉しいだろ、太陽」
嬉しいわけあるか。
流石に鈍感そうで馬鹿そうな雷也でも、このタイトルなら俺達の関係に気付いてしまうだろうよ。
賢い椿なら尚更。ああああ。頭痛い。
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