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約束は破るためにある5
腕に閉じ込めた身体が強張る。
こいつが今どんな心理状態にあるのかなんて、顔を見なくたって分かる。
逆に俺がどんな気分で何を言おうとしてるのかは、南条には分からないのだろうけど。
「…えっと、ごめん」
「謝るところねぇよ。」
言葉に被せる。
少し強めの語尾になってしまい、ビクッと震える背中を優しく撫でてやる。
こっちだって、滅多にやらないことをしようとしてんだ。
多少声がキツくなっても許してほしい。
「わり、怒ってんじゃねぇから。」
「……うん」
柔らかい髪が鼻先を擽る。
胸に吸い込めば、溢れるような…逃げたいような…何とも形容しがたい気持ちになる。
「あのな、滅多に言わないからしっかりと聞けよ。」
「え…」
戸惑う南条をキツく抱き締め、それからゆっくりと身体を離す。
おずおずと見上げてくる顔は不安に包まれていて、なのに艶めく唇が色っぽくてそこに吸い付きたくなる。
色の白い肌は僅かに染まり、今にも泣き出しそうな瞳が自分を見つめていることに気分が高揚する。
めちゃくちゃにしてやりてぇ。
凶暴な想いをぶつけて、何も知らなさそうな無垢な身体を無理矢理暴きたい。
喘ぐ口をキスで塞いで、奥の奥まで自分を刻み込んでやりたい。
…って、今はしねぇけど。
欲深い自分の思考に若干引くが、そのくらいコイツに心を奪われている。
どんな手を使ってでも手に入れたい。
例え今の地位を失っても、南条を失うことの方が堪えられない。
大きく息を吸い込み吐き出す。
心を落ち着かせ、滑らかな頬にソッと触れた。
「あんたが好きだ」
「…………………」
初めて告げる想いは緊張で小さくなってしまったけれど。
それでも、静かな部屋にはやけに大きく響いた。
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