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溺愛×未来 四
「顔だけが良いこのジジイは、涼の父親だ」
「え、お父さま!?」
「もう義父あつかい!」
女子高生二人が爆笑しだしたが、涼さんの表情を見てお互い目配せしながら肘で突きあう。
「ごめんね、涼さん。メールしたんだけど、」
「あ、そうなんだ。あの、俺もテレビの話を、朝登くんに聞いてから返信しようって」
急に涼さんの声のトーンが低く、元気がなくなった。
「兄貴、こいつボコるなら協力するけど」
「ってか、まじなの? 仕送り、わたしら聞いてないけど」
多田と父親の登場ならまだわかる。けれど二人の男の人と女の人はどうやら涼さんの兄弟らしい。実家に居なかった、次男くんと長女の子かな?
「美穂ちゃん、花ちゃん、ごめん。修羅場になりそうだからな」
「うん。またね」
二人は空気を読んで、さっさと駅の方へ逃げていく。
残ったのは、おどおどしている涼さんの美父と、不機嫌な、今にも誰かを殺りかねない多田、そして美父を逃がさないように囲んでいる二人の弟妹。
カオスな展開だったが、涼さんが酷く動揺しているのが伺えたので、俺は息を吸う。
「では、何かお飲み物をお持ちしますね。すみませんが、お客様が増える時間帯には二階に移って頂きます」
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