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溺愛×未来 七
俺は、涼さんの複雑な事情は知らない。
知りたくない、の方が正しいのかな。
どんな事情があろうと涼さんが我慢してきたのに変わりがないから同情したくない。
でも弟妹さんたちはちゃんと涼さんを分かってくれているように思えた。
姉弟が仲がいいのは羨ましいことだ。一人っ子の俺も、兄弟がいたら一人でご飯を食べ産事もなかったのに。
「うーん。俺ね、父さん」
やはり通帳は手に取らず、珈琲を両手で持つと息を吹きかけた。
「父さんや義母を恨んでるわけじゃないし、高校に行かなかったのは自分の意志でもわるからもう気にしないことにしたんだ。それに今、色々謳歌してるし。辛いことも生きてたら誰だってあるわけだしね」
「涼」
苛立った多田が声を荒げるが、どこ吹く風で涼さんは穏やかだった。
「家族なんだから、俺だけ犠牲にしてきたって同情されるのも嫌だなって。俺ね、今、幸せなんだ。分かってくれるこ、恋人もいるし。高卒認定試験だって受けてるし。だからお金は、少しでも未来の選択肢が広がるように子どもたちのために使ってあげてよ」
有無も言わさない幸せオーラの涼さんに、多田も美父も弟妹もたじたじだった。
だが聞いて欲しい。彼は今、恋人がいて幸せだと言ってくれた。
それが泣きそうに嬉しい。
俺がしたことを全部許して、幸せだと言ってくれている。
「美弥も夏夜も、ランチ食べていく? ここのランチは美味しいんだよ」
「いや兄貴、あのさ」
「父さん殴らないの? 協力するのに
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