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溺愛×未来 九

「そんなの、俺が現われた日からお役目ごめんですよ」 ふっと笑いながら厨房から出て、クラッカーと適当に乗せたサラダを渡す。 すると、多田が足で蹴ってきた。 「お前も涼もまだガキだ」 「……数歳しか年齢変わらないくせに」 「じゃなくて、俺はもう面倒は見ないけど、金と口は出してやるから。――相談ぐらいは、な」 乱暴に皿を奪うと、俺の返事も聞かずに行ってしまった。 あの人が、ノンケで本当に良かったと思う。 弟を思う気持ちで涼さんに接して来てくれて良かった。 でないと、あんな良い性格の人、――涼さんが惚れてしまうかもしれない。 「私、悪阻が酷くて。さっぱりしたものを少しだけ頼めます?」 「俺、肉が食いたい」 多田が皿をもって行ったせいで、今度は涼さんの弟くんと妹さんがやってきた。 「肉は了解です。さっぱり……。グレープフルーツを絞りましょうか?」 「お願いします」 二人はカウンターに座ると、俺の顔をじっと見てくる。 「お兄ちゃん、こいつ、私、あと五人。顔だけは良いのが救いだけど、――親を選べないって不幸だと思いません? イケメンのお兄さん」 「まあ。……でも涼さんは後悔してないから俺も後悔はしないことにする」 「うわあ。兄貴信者」

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