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本音×ウソツキ 四

「午前中に予約って珍しいね。ここってやっぱランチとディナーが美味しいのに」 「……ランチとディナーって、全部じゃん」 嬉しそうに鼻を掻く朝登くんが可愛い。 「で、明後日の半休、俺、三階をいい加減片付ける」 「あ、そうなんだ。手伝おうか?」 「まあ、……でも涼さんの休日だし。俺がしたいだけだから」 なんとも歯切れの悪い返事が返ってきて俺も戸惑う。 やっぱり朝登くんはご両親のことをよく思っていないんだろうな。 あまり深くは聞いていないし、俺も父さんは頼りにならないって感じだし。 詮索はいけないよね。 俺は、兄弟が多かったことに今はもう恨みはない。 それに今、とても幸せだしね。 「今日のランチはなに?」 「今日は、枝豆のクリームスープとトマトスープ、あとはイタリアンチキンとラム肉のワイン煮。サラダはいつもので、デザードはグレープフルーツかオレンジのシャーベット」 「えー、どっちも選べないほど好きなやつだ」 「なんで賄いで食べる気満々なんだ」 呆れた顔で言いつつも、絶対に残してくれているのは分かっている。 ここは朝登くんだけで料理してるから、メニューは少ないけど大人気なのはどれも美味しいからだ。 俺も少し手伝えればいいんだけどね。 どうしても大味、大鍋で大量に作る俺は、彼の繊細で丁寧な料理はまねできない。

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