138 / 152
本音×ウソツキ 六
藤森さんは、少子化と製菓の仕事の減少によって、進学希望者が減っていることを教えてくださり、俺さえ良ければ入学しないかと進めてくださった。
入学金は、父さんが返してくれた額から賄えた。
それに二年からは、成績に免じて学費を免除してくれるとおっしゃってくれた。
と同時にもう夜間コースは人数が満たしてしまったので入るなら美穂ちゃんたちと同じ一般コースだ。
「やる気がないなら断ってくれて構わないよ。嫌いな人が無理してはいる学校ではないからね」
「は、はい」
「でも後悔ばかりして遠回りしてきたのなら、数年ぐらい自由に好きなことをしても罰は当たらない。君はまだ若いからね」
怖い顔かと思ったのに、飴と鞭を使い分けるように彼は優しい言葉をくれた。
どうしよう。どうして誰も反対しないんだ。どうして俺に決めさせてくれるんだろう。
今まで選択できなかった。厚真兄ちゃんみたいに頭から押さえつけて決めつけられることはあったけど、こんな風に俺の意見が尊重されることはなった。
「君は表情が豊かだね」
「あ、そうです。よく言われます」
「朝登くんは、顔が険しいだろう。良い子なんだけどなあ」
「そうなんですよ。良い子なんですけどね」
二人で笑っていたら、藤森さんはカウンターの方を見た。
「そういえばここのカウンターにテレビが置いてあったことがあったのをご存知かな?」
ともだちにシェアしよう!