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本音×ウソツキ 八

「この前、倅のアレルギーの弁当を此処で頼んだんだが――」 「え、あ、はい」 全く手伝わせてもらえなかったやつだ。 「製造過程でそば粉があると駄目な孫が居てね。信じられるかい。その工場を通るだけで咳き込むんだよ。それに卵アレルギーの娘に、小麦粉や乳製品がダメな子。面倒くさい子たちのために、朝登くんは丁寧に弁当を作ってくれる」 「そうですね。彼は細かくて綺麗な料理を作ります」 俺が部屋が常に散らかっていた日々だったから、ついつい散らかしちゃうんだけおd、彼は文句を言いつつもちゃんと掃除してくれる。 俺が掃除機を丸く使っていたら、端っこを箒で掃いたり。 繊細で不器用だけど彼の行動はいつも真っすぐだ。 「彼は、ご両親の葬式で全く泣かなかった。……それが不器用だからではなく、すれ違ったままだったからだと私は気づいてね。……心配なんだよ。まだ30代にもなっていない若造が、親の愛を知らないなんてね」 けれど、伝えたら……彼は冷たくした過去を後悔する。 だから藤森さんも躊躇したんだ。 「ま、彼の問題だ。恋人でも出来たら変わるかもしれないしね。君は一度、うちの学校を見学にきなさい。揃える調理器具だが、お古でいいなら生徒が要らなくなったのをあげるよ」 メガネを再びかけると、講師としての顔で俺を見ていた。 けれど俺は今すぐ彼を抱きしめたくなった。

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