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本音×ウソツキ 九

Side:朝登 「御馳走様。お会計は」 「藤森さんにもらえません。また来てください」 今日は俺が無理を言って呼び出したんだ。最初から貰うつもりはなかった。 藤森さんも俺の性格を知っているからそれ以上は言わず、苦笑いして帰って行った。 どんな話をしたのだろうか。 涼さんはなんて答えたのだろうか。 聞きたいのだけど、背中に貼りついているので表情が見えない。 藤森さんが帰った直後、俺の背中に抱き着いてきた。 「あの、話は?」 「うん。見学行く。朝登くんのおかげだ。キスしたいぐらい嬉しい」 うっしゃ! 今すぐこちらを向かせてキスしたい。 なのに、背中を抱きしめる力が強くなる。 「……涼さん?」 「お願いがあるんだ」 すりすりと背中に鼻を擦りつけられて、幸せで死んでしまいそうだったが理性でぐっと耐える。 ここで盛っては、男としての威厳がなくなる。 「なんですか?」 「……仕事が終わったら、すぐに三階の遺品の整理をしてほしい」 「……え?」 お願いっていうから何かと思ったが拍子抜けしてしまう。 遺品整理なら、どちらにせよ明日するって伝えたのに。 「本当は今すぐ、してほしい。けど、仕事があるし」 「分かりました。なんか藤森さんに言われたの?」 「ちがうけど、理由は聞かないで」 お願い、と言われたらいやだと言えるわけはない。 理由も聞かず俺は頷く。 どうしたわけか、俺には教えたくないならそれでいいんだ。 たけど――それからランチの忙しい時間も涼さんの顔は暗く今にも泣きだしそうだった。

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