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溺愛SILLY

Side:涼 厨房に無言で入っていった彼を追いかける。 背中に話しかけるなって書いてる。 「……怒ってる?」 いつもの朝登くんじゃなくて、少し怖い。 何がいけなかったんだろうか。 俺が馬鹿だから、何か怒らせることを言ってしまったのだろうか。 「怒ってない」 短く吐き捨てるように言われて、悲しくなった。 そこまで冷たく言わなくてもいいのに、やっぱり怒ってるじゃないか。 服を掴んで縋りながらも、泣きそうになって下を向く。なのに。 「……本当に怒っていない。二度とあんな真似しない」 悲痛な感情が言葉に混ざる。不器用な彼らしい、短い言葉の中から感じる愛情。 「本当に怒ってないなら、キス、してよ」 背の高い彼の顔に近づくために背伸びする。じわりと広がった熱が、彼の耳を真っ赤に染める。 俺の耳に髪をかけたあと、躊躇いながらも下りてくる唇は額に。 不器用で照れ屋な彼らしい。俺はそんな君だから好きになれた。 唇に優しく触れた後、首に何度もキスしてくれた。 「ふふ。くすぐったい。くすぐったいってば」 「――俺は涼さんが好きです。涼さんさえいればいい。だからあんたが不安な顔をすると、周りが傷つけたんじゃねえかって不安になる」 ぎゅっと力強く抱きしめられて、背骨が折れるかと思った。 けど熱い。 彼の熱い気持ちと、早くなる心臓が俺のことを好きだと言っていた。 「君のご両親が、カウンターにテレビを置いていた理由を聞いたんだ」 「……あんたが俺の親のことで胸を痛める必要はねえ」 「違うよ。違うんだ。ちゃんと聞いて。でもきっとディナーの仕込みの手がつかなくなるだろうから、良い子で待ってて」 お願い、と唇にキスした。 キス、した。俺は君がどんな表情をしても受け止めるから。

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