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溺愛SILLY 四
ファイルを手に持ってぱらぱらとめくる。
見たこともない読みきりの切り抜きから、コミック雑誌の切り抜き、アニメ化について書かれているアニメ雑誌や、タイトルと時間が載っている新聞のテレビ欄。
彼の名前はどこにも載っていないのに、丁寧に丁寧にファイルしてある。
「朝登くんは、ご両親に似て几帳面なんだね」
朝登くんの胸の中にもぐり、彼に見せながらファイルを見せていく。
すると開いたページに、ぽたぽたと水滴が落ちた。
何度も何度も、はらってもはらっても落ちてくる。
「……朝登くんは、ご両親にどの雑誌で編集していたって教えていたの?」
「わかんない」
後ろからぎゅうっと抱き着かれて、振り向いてはいけないとファイルに落ちた水滴を指先で掬い上げた。
「ぺろ……この味は水酸なんちゃら?」
「うっせ。塩味だろ」
言葉使いが悪い彼は、初めてだ。
「……『何を考えているか分からない』って遠ざけられてると思ったから、俺、どこまで自分のことを話したかも覚えてねえ」
「……」
「死んだときだって、何年も家に帰ってなかった。電話越しで言ったのかも、……覚えてねえ」
「うん」
俺の首筋が濡れていく。
涙って温かいんだね。それとも朝登くんの優しい気持ちが流れているから、温かいのかな。
ファイルの中に、ご両親の不器用な愛情を感じた。
良かった。嫌われている子どもなんて、この家には居なかったんだね。
「……朝登くん」
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