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距離感 Side:涼
「涼さん、勉強してるの?」
お風呂を上がると、二階のキッチンのカウンターにご飯が並んでいた。
ローストビーフの入ったサンドイッチと、コーンとグリンピースの入ったスクランブルエッグ、そして野菜沢山のコンソメスープ。
格好いいのに料理までお洒落ですごいなあ。俺なんて朝、適当に菓子パンとか食べてたけど。
「あの、涼さん、聞いてます?」
「え、うん。美味しいよ」
聞いてなかったと咄嗟に言えなかったけど、代わりに彼は口を尖らせる。
「試験、いつなんですか?」
「試験……あっ」
「高校卒業認定試験? 昨日見てしまって」
「えっと、もうすぐだけど、大丈夫。あと二教化なんだ」
九科目の試験があるけれど、受かっていた教科は、次の試験の時に免除される。
仕事の合間に勉強は難しかったので、二教科ずつ勉強してから挑んでいた。
ので、次の二教科でクリアできそうだから、頑張らねば。
スクランブルエッグを大きく口の中に頬張ると、バターの香りに包まれて思わず両手で頬を包んで、幸せのため息を吐いてしまった。
「美味しい……」
「試験の勉強、午前中はしていいですよ。客少ないし」
「いいの?」
「できたら、俺、不愛想だからバイトが入ってくれなくて、ランチとディナーの時にいてほしいぐらい。後は、自由にしていいです」
「……すごい。朝登くん、神様みたいに優しいし、料理もできるし、本当、すごい」
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