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距離感 Side:涼

お昼はランチメニューのAかBの二種類しかないらしいが、スープが選べたり、パンやライスで別れるから忙しいと間違えそう。 これを料理しながら運んでいたのなら、彼を本当に尊敬してしまう。 「高崎さん、来ちゃった」 「ちゃんと脱稿したからだよ」 「ああ。席空くまで待って」 忙しい中、昔担当していた漫画家さんや、編集部の女性も来たりした。 本人は仕事が向いていないと愚痴っていたのに、向いていないならこんな風に辞めてまで店に来たりしないと思う。 きっと慕われていたんだろうな。 不器用だから心配してたとか偉そうなことを言ってしまったけど、俺の方が無職で低学歴で童顔で、落ち着きもなくて恥ずかしい。 「涼さん、休憩してください」 「え」 時計を見ると、いつの間にか三時を過ぎているところだった。 お客様も、並んでいる人はいないけど一応席が全部埋まっている。 「これから学校帰りの学生が来る時間だから、今のうちに」 「そっか。今日はランチからだからか俺、まだ疲れてないんだ」 カウンターに座ると、学生さんが来る準備なのかパンケーキを作っていた。 「ここで朝登くんの作るとこ見とこうかな」 「……うわ」 嫌そうな顔をされたけど、照れてるだけだと信じたい。 だって休憩室はロッカーと大きなソファだけだ。 前にバイトに入ってくれていた人はそこで時間ギリギリまで眠ってたそうだけど、俺はまだ覚えることもたくさんあるし。 「どうぞ」 「……え、俺?」 「好きそうだから」 目の前に置かれたのは、『welcome』とチョコペンで書かれたパンケーキ。 生クリームと苺が交互にお皿を囲んでいて、クマの形のクッキーも置いてある。 「うわあ、可愛い。写真撮っても良い?」 「どうぞ。涼さんのなので」 「やった」 嬉しくて携帯をロッカーに取りに行って、液晶画面を見て固まった。 『着信:三件 多田 厚真』

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