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距離感 Side:朝登
「あの新しいウエイターさん格好いい!」
「ねーねー、店長さん、あの人なんて名前? 彼女いるの?」
ようやくピークのランチが終わり、次は夜の仕込み……というときに厄介なのが学生だ。
俺のように口下手な人間にもフレンドリーに接してくる。
今は、カウンターでパンケーキを食べている涼さんに興味津々のようだ。
俺が言わないと、休憩中の彼の邪魔をしてしまいそうだ。
「プライベートだ」
「それ、プライバシーじゃね?」
「なんで店長が動揺してんの。ウケる!」
両手をパンパン叩きながら笑う女子高生にげんなりする。
もう少し品の良い笑い方をしてほしい。
「食べ方めっちゃ可愛くない?」
「てかてか、肌、私らより綺麗」
「やっば。顔小さい」
「……食べたらとっとと帰れ」
涼さんが見世物になっているようで気分が良くない。
確かに肌は白くてきれいだし、顔も小さい。目も大きい。
けれど、意外と力持ちだし根性もあるし気も使えるし、疲れていても笑顔で、俺よりも人間として大人だ。
「涼さん、珈琲のお替りは?」
「え、あ、うん、」
急に声をかけたのがまずかったのか、彼の手の上で携帯が飛び跳ねる。
そして笑いながらエプロンのポケットに隠す様に仕舞われた。
「いいよ。美味しかった。ありがとう」
綺麗に平らげてくれて、珈琲も飲み終わっていた。
のに、どこか笑顔に違和感を感じる。
「なにか嫌いなものがあった?」
「ないよ。俺、好き嫌いはないんだ。辛いもの以外」
「……え、カレー」
カレーを一週間分作って食べるとか言ってたような。
「甘口だよ。弟たちに甘口作ってるうちに、そっちがなれちゃってさ」
あははと笑うと、店の端で騒いでいた女子高生たちが黄色い声を上げた。
あいつらは、本当にさっさと帰るべきだ。
「学校帰りにレストランでパンケーキ食べるって、女の子は可愛くていいね」
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