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距離感 Side:朝登
ひらひらと手を振って女子高生に微笑みかける。
本人は無自覚だろうが、足を組み替えて反対の手で耳に髪をかける仕草が気だるげで、微笑んだのが社交辞令だとすぐわかる。
けれど女子高生たちはそれだけで嬉しいのか、テーブルを叩いて興奮している。チンパンジーみたいだ。
「朝登くん、部活してた?」
「ああ、してました。弓道部」
「あー! 肩幅あるしがっしりしてるもんね。格好いい」
「……チームプレイが苦手だったからって単純な理由からです。涼さんは?」
立ち上がって食器を片付けようとしていたので奪う。まだ全然、休憩時間は残っている。下手に動き出すともう働きそうな真面目な人だ。
「俺? 俺は帰宅部部長。率先して家に帰る」
「帰宅部に、部長?」
ドヤ顔で言うあたり、なんて可愛いんだろうとにやけそうになった顔を手で隠す。
やばいやばい。
「俺が学校終わると同時に、保育園に二人迎えに行って、夕飯の準備や洗濯ものしてたら、小学校からチビたちが帰ってくる。で、部屋が散らかるから外で遊ばせに行って――みたいな。部活も興味あったんだけど、母さん一人じゃ大変だったし」
「……まじっすか」
「母さんっていっても義理ね。中学ぐらいで再婚してくれたんだよ。それまでは一切俺が家事してたから、助かったんだよ。妊娠してからはほぼ俺が家事して」
ちらりと騒ぐ学生を見て、寂し気に微笑む。俺が部活で人と関わるのが面倒だなとだらけた高校時代、彼は毎日忙しく自分の時間なんて持てなかったんだろう。
「母さんが妊娠して、双子だって分かったのが中学三年の初めで。父さんも仕事上手くいってなかったし、高校行ける雰囲気がなかったんだよね。だから、高校行って、部活後にラーメン屋とか、寄り道してコンビニで肉まんとか憧れる。パンケーキなんて夢の夢だったよ。ありがとう」
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