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愛情の表現 二
あはは、と笑ったのに、突然朝登くんは包丁をまな板の上に置くと項垂れた。
「えー、そこまで嫌がる? 冗談だってば」
「……嫌じゃない」
嫌じゃないのに、なんでそんな反省してるようなポーズになってるの。
「えっと?」
「下半身にキた」
「んんん?」
下半身に何がきたんだ?
「だ、大丈夫? あ、味見する? 普通にカレールー溶かしただけだけど!」
このまま倒れこんでしまいそうなほど前かがみな彼が心配で駆け寄る。どうしたんだろう。疲れてお腹でも痛くなったのかな。
弟たちは、お腹が痛いとこんなポーズとって痛みをやり過ごそうとする。
もしかしてお腹?
お腹を差しってあげようと手を伸ばした。
すると、その手を強引に引き寄せられ起き上がった彼に抱きしめられた。
「……味見していい?」
「う、うん?」
いいよ、と言う前に、朝登くんの顔が近づいてきた。
近づいてくる瞳。ああ、綺麗なブラウンだ。
そんなことをうっすら思いながら、気づいたら唇が重なっていた。
かさついた唇が貼りつくように重ねられる。角度を変えた時、彼の赤い舌が見える。
唇を舐めて、再び重なったと分かったのは――濡れた唇が熱かったからだ。
「――やっ」
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