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愛情の表現 五
Side:涼
……おかしい。
俺はもっと怒るはずだった。いや、怒った。
自分だって男なのに、急所を容赦なく殴った。
なのに、なんでもっと怒れなかったんだろう。
男にキスされた。まさか29歳になって男にキスされる体験ができるとは思わなかった。
が、そこまで怒れないのは、――きっと朝登くんだからだ。
ここにお世話になって三日目。
昨日は試験勉強をして朝になってしまっていた。
彼が買ってくれたベットから起きると、これまた必要か分からないが彼が買った全身鏡に、自分の寝癖でめちゃくちゃになった髪をチェックする。
そして彼が買ったクマのもこもこスリッパをはいて、充電が完了してある携帯を持って立ち上がった。
――昨日も一昨日も、休憩中に抜けた彼が、俺のモノを買ってきていた。
俺に対して甘すぎる部分があるから、きっと本気で怒れないのだ。
恐る恐るリビングへ向かうために廊下へ出ると、むわんと温かい空気を感じる。
……シャワーかな。
そういえば昨日は天気が悪くてバスタオルが乾ききって無かったので、椅子に掛けて干してたんだっけ。ちゃんと持って行ったのかな。
「ある……」
乾いているのを確認して、仕方なく脱衣所までタオルを持っていくことにした。
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