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愛情の表現 七

表情は硬いけど、そわそわ落ち着かない様子だ。 おれと出かけたいんだと思う。……けど。 「……ごめん。俺、図書館で勉強しようと思ってる」 「あ、そうですか。邪魔になるなら、俺でかけておきますが」 「大丈夫。図書館の方が分からないとこ調べやすいし、静かで好きなんだ」 「分からないとこは、俺が……」 何か必死で飼い主の気を引きたい犬みたいに可愛い。 けどごめん。……俺はちょっとだけ嘘をついている。 それは言えないというか、言ってはこんな状態だしきっと迷惑かけてしまう。 「ううん。年下の君に教えてもらうわけにはいかない。頑張るよ」 ちゃんと朝登くんは給料明細とか雇用保険や契約書も作ってくれている。 あの給料だと、工場の時よりやや多いぐらい。来月からは十分に仕送りができる。 だから今月だけ。今月だけなんだ。 「そっか。何かあれば言ってください」 「ありがとう」 笑って誤魔化した。本当は会いたくない人。 でもこれ以上朝登くんに迷惑かけたくないので、嘘を吐く。 ごめんね。今回だけ。 会話も普通に振舞ったから大丈夫。 ―― Side:朝登 「あ、バス代」 図書館に涼さんが出かけて数分。 彼は今、所持金が1000円もなかったはずだ。 ここから一番近い図書館に向かうとしても――。 商店街で貰った近辺マップ付きのカレンダーから、近くの図書館を探す。 すると、月曜は閉館と注意書きがされていた。 閉館ってことも伝えたいし、バス代と昼食代ぐらいは渡しておきたい。 『今どこ?』 急いでメールを送ったので素っ気なくなって落ち込む。 せめて、メールぐらい顔文字とか絵文字付けて可愛くすればいいのに、俺は。 『向かってるってば。駅の噴水のとこで待ってます。金額はそれで充分です』 ――? 金額? 駅? ここから近い駅でも、行きのバス代ぐらいしか持っていないはず。 というか、誰と間違えてメールしたんだろう。 「……」 たまたまだ。たまたま俺も駅前のふくろうカフェに行きたいと思っていたんだ。 たまたま通りかかる予定だ。ただ、それだけ。

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