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愛情の表現 八
Side:涼
「んとに。厚真兄ちゃんって、すっげえ過保護なんだから。何回も何回もメールや電話してこなくていいのに」
駅前の噴水前についてからも、うんざりした気持ちは変わらない。
死んだ母さんの、お姉さんの子どもってことで、俺の従弟になる。
といっても、母さんは半ば駆け落ち状態で父さんと結婚したらしく、向こうの親戚の顔はほぼ知らない。
俺が中学校の時に、大学生だった厚真兄ちゃんが尋ねてくれて少しずつ交流ができたというか。ちょっと説教臭いし、いっつも耳が痛くなるようなことばっか言うから、苦手と言えば苦手。
でも俺のことを心から心配してくれてる人。唯一って言っていいほど、心配してくれてる。
ので、強く言い返せない。
なんて言っても、向こうは超一流大学出身で、エリート商社マンで、一族の顔って感じだもんな。
けど俺だって29歳で、いい加減いい年した大人が説教されるのもどうかと思うわけで。
いやいやいや。……お金を借りる時点で全然しっかりした大人じゃないけど。
「何を百面相してるんだ、涼」
「わ、え、はやっ 厚真兄ちゃん」
目の前にキーケースだけを持ったスーツ姿の厚真兄ちゃんが立っていた。
銀色のフレームの眼鏡、一ミリも乱れのないワックスで固められた前髪。
神経質そうな鋭い瞳に、意志の強うそうな引き締まった唇。
足の長さも俺と全然違うし、身に着けている香水や時計からも一流の匂いがする。
「出張帰りと言ったろ。面倒だから駅の上にホテルをとった。今日はそこで眠る」
「え、家に帰ってあげなよ。三日帰ってなかったんでしょ」
「仕事だから当然だ。あと、お前の話を聞くと、苛立ってしかたない。子どもに当たったら嫌だろ」
「……ふうん」
厚真兄ちゃんが奥さんや子供にそんなことをしないってのは分かってるんだけど、やっぱ変に真面目だな。
「それで? いい加減中卒じゃこうなるってわかったろ。次の就職先が見つかったと言っていたが、どこだ。規模は? 収入は? どんなことをするんだ」
「そんなに早口で捲し立てないでよ。どっか座って話そう。……俺に時間をとりたくないならお金だけ貸していただいたら消えるから」
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